練習でエッジをあまり研がない人が試合前夜に急に一生懸命エッジを研ぐのをよくみかけます.本来であれば日ごろの練習からエッジを研いで立てておくべきです.練習でエッジを研ぐ頻度は雪質によって大きく変わると思います.概ねアイスバーンなら毎日,柔らかい雪なら4,5日くらいでエッジが丸まってしまうので,練習の時からエッジを研ぐ必要があると思います.
試合前日のエッジチューンは,翌日のレースの雪質を予測してエッジの仕上げを選択することが重要です.もちろん試合前日もエッジは研ぎますが.おおまかな分類は,柔らかい雪ならサンドペーパー,アイスバーンならダイヤモンド,人工雪やスノーセメントで固められた雪はストーン,です.エッジを研いだあとに,1往復程度,前述の道具をエッジ表面にこすりつけて仕上げます.詳しいやり方は,「チューンナップ」の「エッジ(仕上げ)」に記述しているので参照してください.
仕上げの選択は案外,難しいです.雪質がミックスされた条件が非常に多いからです.例えばアイスバーンの上に新雪が乗っている場合,早いスタート順であれば新雪の条件を滑ることになりますが,スタート順が遅いとアイスバーンが露出して条件が全く変わるので,自分のスタート順で雪質がどうなっているのか予測してエッジ仕上げを選択しなければなりません.また人工雪と天然アイスバーンがミックスした条件も多いですが,それぞれの雪質に適した仕上げは異なるので,どっちを選択したらいいのか非常に悩ましいです.
このような場合には,とりあえず自分のお気に入りのエッジの仕上げ方法を選択する方法があると思います.自分の滑りの特性に相性のいい仕上げは,幅広く様々な条件に適応できる可能性が高いからです.そのためには日ごろの練習からしっかりと仕上げまでエッジチューンを行い,様々な仕上げ方法で様々な雪質を滑り,自分のお気に入りの仕上げを知っておく必要があります.
なお今更ながら,日本式の脚力で滑る方法では,エッジの仕上げの違いはあまり影響しません.もっと言えば,エッジのたち具合もそこまで影響しません.エッジをグリップさせるのは主に自分の脚力で押し付けて行いますし,雪質の違いには脚の微妙な動きで調整し対応できるからです.練習の時にろくにエッジを立てず,試合前日に急に一生懸命エッジを研ぐ人は,日本式の脚力で滑っているから練習ではエッジが丸まっていても滑られるわけです.なので試合前日にあわててエッジ研いだりしないでそのまま滑ってもでも大丈夫だと思います.もちろん,日本式の脚力で滑る方法では,脚力と体力が高く,微妙な荷重調整ができるごくわずかな天才スキーヤーにしか速く滑ることはできないのは明白です.
腰高の滑り方をしていれば,エッジの立ちと仕上げの調整は滑りに大きく影響します.腰高の滑りは脚が伸び切って重心が高い場所に位置した状態で大きく傾けることとなるので,全体重をしっかりと預けられる雪面にしっかりと食い込む鋭いエッジが必要だと思います.また腰高なら非常に強い力をエッジに加えられるとともに,足は伸び切って棒になっているので微妙な荷重調整ができないため,エッジの仕上げの影響を大きく受けると思います.逆に言えば微妙なエッジ調整が滑りに大きく影響するのは腰高の技術が習得できている証拠でもあります.エッジ調整が悪く上手く滑られない時に「道具のせいにするな!」という根性論を持ち出す指導者もいますが,それは日本式の脚力で滑る滑り方には当てはまることもありますが,腰高の滑りでは理論的に仕方ないことなのです.
2019/11/05