トップダウン強化

アルペンスキーの場合,最終目標であるヨーロッパの環境に適合できる技術を元々から取り組む「トップダウン強化」が効果的だと思います.国内の各年代で良い成績を残してから世界へ挑戦するという「ボトムアップ強化」は,むしろ逆効果だと思います.

様々なスポーツにおいて,全国中学,インターハイ,インカレ,全日本選手権など,国内の各年代カテゴリーで十分な成績を残してから,世界レベルへ挑戦する「ボトムアップ強化」のが一般的だと思います.しかしアルペンスキーの場合,国内の各カテゴリーで良い結果を残そうとすると,日本の特殊なレース環境(短くなだらかで雪質が柔らかい)に特化した技術が自然に身に付くと思います.ヨーロッパのレース環境(長く急でアイスバーン)には適合しない技術だと思います.国内で実績を残そうとすればするほど,ヨーロッパに通用しない技術が身に付いてしまいます.

国内で実績を残し,日本代表になって,いざヨーロッパで戦うようになった時,そのままの技術ではヨーロッパの環境には適合しないので,改めてヨーロッパの環境に適した技術に修正しなければなりません.しかし,一度身に付いた技術を修正するのは非常に困難です.結局,修正できずにヨーロッパで通用できなかった選手は非常に多いと思います.アルペンスキーにおいて国内での段階を踏んだ「ボトムアップ強化」は,選手生命に関わる非常に危険な方法だと思います.

2021/10/16