基礎練習とはプルークボーゲンやシュテムターン,ストックを使った様々なバリエーションドリルなどの,比較的低速で行うフリー滑走練習全般のことを示しています.
基礎練習は腰高の滑りには特に重要だと思います.練習後やレース後など,工夫して時間を作ってこまめに基礎練習に取り組むべきだと思います.一方,日本式の脚を曲げ伸ばし脚力で滑る滑り方には,実は基礎練習はさほど効果的ではないと思います.日本式の滑りの選手は,基礎練習にかける時間を腰高の滑り方を習得する修練時間に回したほうがいいと思います.
基礎練習は日本では比較的マイナーな練習メニューで,しっかり取り組んでいる選手は多くないと思います.これは日本式で滑る選手が,基礎練習の効果が低いとわかっているからにほかならないと思います.日本式の滑りでは,膝関節をサスペンションにして雪面に非常に巧みにタッチできるので,基礎練習によって繊細な雪面感覚を磨く必要がないと思います.また,日本式の滑り方では,膝のサスペンションと角付けにより,バランスをとることが容易なため,基礎練習によりバランストレーニングを行う効果も低いと思います.また,脚力だけでターンするので全身の骨格のアライメントがさほど重要ではないので,基礎練習による骨格アライメント調整の必要もないと思います.基礎練習は腰高の滑りで取り組むことが大前提になると思います.
基礎練習には主に二つの効果があると思います.一つ目は,姿勢のアライメントを整えることです.低速でゆっくりと,自分のターン姿勢は本当にこれでいいのか,確認,修正,技術向上させることができると思います.もう一つは,雪面感覚を養うことです.腰高の滑りは,可動するメインジョイントの骨盤が雪面から遠いため,雪面感覚が鈍くなりやすいデメリットがあると思います.低速で敢えてスキーをずらすことにより,様々な雪質でのスキーの反応挙動を確かめ,鈍くなった雪面感覚を取り戻す効果があると思います.
基礎練習には,非常に多様なバリエーションがあると思います.敢えて必須の基礎練習を上げるとすれば,低速プルーク,シュテムターン,斜滑降,片足スキーの4つだと思います.低速プルークでは板がずれる感覚を確認する効果が重要です.また,骨盤の動きも確認することができると思います.斜滑降はオーストリースキー教程で言うところの最も重要な「アルペン滑降姿勢」を探求する,非常に重要な基礎練習だと思います.低速下で,骨盤の向き,骨盤の傾き,上体の向き,足首の角度,等々,全身の全てのアライメントをかなり詳細に確認し突き詰めることができると思います.シュテムターンは低速プルークと斜滑降を組み合わせた,基礎練習の中での実践練習だと思います.斜滑降でしっかりとしたアルペン滑降姿勢を取れていないと,足を空中に上げて次の外足を踏み出すシュテムターンの動作が正確にできないと思います.片足スキーも実戦的基礎練習だと思います.バランス感覚を養いながら,複雑な雪面感覚を養うことができると思います.
よく基礎練習をフリーの頭に3,4ターン程度入れている選手を見受けますが,少なすぎて効果が低いと思います.基礎練習は長く連続して,1本,20-30ターンくらい連続でやったほうがいいと思います.ほんの数ターンだと脚力や器用さでごまかしてしまうと思います.長時間連続でやるには,正しい無理のないアライメントが必要になると思います.連続で長く基礎練習を行うことにより,腰高で正しいアライメント姿勢を身に付けられると思います.
基礎練習は大きく二種類に分けられると思います.一つは繰り返し反復して取り組むことにより,より良い動作や正しいアライメントを誘発し,技術向上を狙うもの.もう一つは,そのメニュー自体をできるかどうかにより,現在の技術レベルを確認するもの.前者は継続して取り組むことにより効果を期待できる基礎練習ですが,後者は大量に取り組んでもあまり意味がありません.例えばプロペラターンは後者にあたると思います.プロペラターンは正しいセンターポジションに乗れていないと高くジャンプすることができないので,正しいポジションに乗れているかどうかの確認をすることができます.ただし,正しいセンターポジションに乗れている人が,ひたすらプロペラターンを練習しても,もうそれ以上正しいポジションに改善のしようがないので技術向上効果はほとん無いと思います.反復して取り組むべき基礎練習は,より良い動作や正しいアライメントを誘発し,技術向上を狙うタイプの基礎練習です.
2020/05/27