ワックスは毎日塗るが,エッジはチューンナップショップでやってもらい,自分ではほとんどエッジのケアをあきらめている人が多いと思います.私は,エッジも毎日,自分でケアするべきだと考えています.プロの料理人がなまった包丁など使わないように,アルペンレーサーも常に鋭いエッジで滑るべきだと思います.そのためにはある程度は自分でエッジをチューンできる必要があります.エッジのチューンナップはハードルの高い作業ですが,サービスマンが付くような選手以外は,どうしても自分でエッジがチューンできる必要があると思います.
なまったエッジや雪質にあっていないエッジで練習していると上達効率が悪いどころか,技術が悪くなってしまうことがあります.なまったエッジは不安定で全体重を預けることができず,腰を低くして探るようなターンの癖がついてしまうことがあります.また,雪質にあっていないエッジはひっかかったり曲がらなかったりして,そんな滑りづらい状態でトレーニングしても効率が上がらないのは明白です.
エッジが立っているかたってないか触ってもよくわからないという言葉をよく聞きます.でもそんなことはありません.指で触って立っていると感じたら,それは本当にたっています.自分の指の感覚を信じて大丈夫です.ただし,チューンナップルームは寒いことがよくあります.寒い場所では指先の感覚が鈍り,エッジのたち加減がわからなくなります.また,エッジが立っているか確認する方向は滑走面からサイドウォールです.逆方向に立っていても意味がありません.爪をエッジで削って立ち具合を見る方法もあります.
エッジは決まって毎日は研がなくていいと思います.柔らかい雪質なら4,5日はエッジが立っていると思います.逆にアイスバーンであれば,毎日研ぐ必要がある場合もあります.毎日のチューンナップで必ずエッジの状態を調べて把握することが重要です.
最初はエッジ角度を何度にしたらよいかわからないと思います.そういうときは,例えばチューンナップを外注する時に,あえてエッジ角度をお任せにすると,その時,そのスキーメーカーに適した一般的な角度にしてくれることが多いです.エッジを何度にしてくれたのか必ず確認して,それでしばらく滑って違和感がなければ,まずはその角度でいいと思います.様々な角度を試すのは,サービスマンが付いてくれるようなレベルにならないと,なかなか難しいと思います.
エッジ作業は,さほど難しい作業というわけではありませんが,コツと段階が多いので,いきなり本番用の板をチューンするのではなく,最初はサブ板等で練習したほうがいいと思います.また,チューンナップに出してチューン済みのエッジから始めるほうがいいと思います.アマチュアがノーチューンのエッジをゼロからエッジを磨くのはかなり大変だと思います.
エッジを研ぐのはワックスを塗る作業の前だと思います.エッジの削りカスでそこらじゅうが汚れますので,ワックスを塗ったあとにエッジを研ぐとカスが滑走面に付着して大変なことになってしまいます.また,よくエッジ削りカスを取り除いてからワックスを塗る必要があると思います.
エッジを研ぐときは,サイドウォールのボーダーを先に削ります.ボーダーを先に削っておかないと,ボーダーが邪魔になってエッジが全然研げません.専用のボーダーカッターを使うのがベストですが,持っている人は現実的には少ないと思います.ファイルの逆側の端で削るのが代替方法としてあります.
エッジを削るにはガイドが不可欠です.それぞれの角度にそれぞれのガイドが必要なので,様々な角度のエッジを作るには複数のガイドが必要になり,購入には少し金額がかかります.ただし,自分のエッジの角度は少なくともシーズン中はそうそう変える必要はありません.自分の角度がわかっているなら,それ一つのガイドで十分です.最近だとまずは88°か89°があればなんとかなると思います.
エッジ削り専用の可変角度のエッジシャープナーも各メーカーから発売されています.しかしファイルの交換が専用でしづらかったり,そもそも前述のようにエッジの角度を頻繁に変える必要はないので,それほど使い勝手の良さを感じないかもしれません.
最近では電動のエッジシャープナーも販売されています.かなりエッジが立つようです.結構高額で,粉じん対策のマスクが必要だったり,アマチュアが入手するのは少しハードルが高いですが,もしかしたらいずれエッジチューンの一般的な方法になるかもしれません.
ファイルはスキー専用のファイルを使ったほうが無難だと思います.もちろんホームセンターで売ってるファイルでも削れないことは全くありません.ただしスキーエッジの軟鋼に適したファイルかどうかは使ってみないとわからないと思います.
ファイルとガイドは強力なクリップで固定するのが一般的です.この時,固定する位置とファイルがエッジと当たる部分が離れすぎると,削るときにファイルがしなって,ガイドと全然違う角度を削ってしまいます.固定位置を近づけると持ちづらくなります.離れすぎず持ちづらくない場所を探すと作業が正確に無駄な力を入れずにできるようになるので案外重要です.
ファイルには方向があります.逆方向だと全然削れません.爪を当てて抵抗がある方向を確認します.抵抗が全然違うので,すぐにわかります.
よく何度も削って大量に削りかすを出している人がいますが,そんな必要は全くありません.プロのサービスマンは削る回数は2,3回だそうです.我々アマチュアでもせいぜい5回以内じゃないでしょうか?
ファイルをエッジに沿って往復させている人もよく見かけますが,削りかすがはさまって上手く削れなくなると思います.いったんファイルを必ずエッジから離して,削り始める位置に戻したほうがいいと思います.
力の入れ加減が非常に難しいです.力を入れすぎるとファイルがしなってガイドと全然違う角度を削ってしまうので,無駄な力を入れないというのが鉄則です.そのためには,完璧なボーダーカットと,良く切れるファイルが必須です.しかし現実的にはアマチュアの作業ではどちらも不十分になりがちなので,そういうときは力を入れるのではなく,削る回数を5回程度まで増やすようにすればいいと思います.
滑走面側のエッジも削る場合(いわゆるビベリング),必ずサイドエッジ側より先に削ります.サイドエッジを先に削ってからビベリングするとエッジの立ち方向が逆になって全然エッジが利かなくなります.ビベリングは0.5°,1°などがありますが,プロのサービスマンでも感覚でやっていて正確な数値はわからないとおっしゃる方もいます.かなり微妙な話なんだと思います.
ビベリングはスキーの回転性を上げるために行います.そのためトップとテールをやや多めにつける方法もあるようです.やりすぎると当然,安定性が下がります.
ビベリングは何度もやると角度が深くなってしまうことが多いです.治すには滑走面を削らないとならず,チューンナップショップに出してマシンで削ってもらう必要があると思います.割り切ってビベリングには手を出さない選択もアマチュアチューンでは妥当かもしれません.
バリは必ずしも取らないといけないわけではないようです.酷いアイスバーンの条件ではあえてバリをとらずによくエッジがかるようにすることもあるそうです.3~5回程度のファイリングではそもそもさほど派手なバリば出来ないと思います.自分で滑ってどうもきになるようなら,ストーン等で落としてもいいと思います.
石を踏んで滑走面やエッジに大きな傷をつけた経験は誰しもあると思います.そういう時は,一度のチューンで修復し切ろうとせずに,複数回に分けて地道に治すほうがベターなようです.
石を踏んだことによってエッジが固く黒く変色する,いわゆる「焼きが入る」こともあります.焼きはファイルより硬いので,ファイルで削ろうとしても無駄ですし,ファイルを痛めてしまいます.いわゆるストーン,砥石を使って削ります.エッジの傷と同様に,滑走性に大幅な影響を与えないのであれば,毎日のチューンの中で少しずつ小さくさせたほうがいいと思います.我々アマチュアがキズを変にいじりすぎて返って滑走性に影響を与える状態にしてしまうことは珍しいことではありません.
2019/01/01