アルペンスキーは体重が重いほうが有利だと思われていますが,本当にそうなのでしょうか?このことについて,北見工業大学の鈴木学長がわかりやすく解説しているのを講演で拝聴したことがあります.ちなみに鈴木学長は現役レーサで全日本マスターズでも上位の常連で,日本のスキー研究の第一人者かと思います.
確かにスタート地点は同じ高さなので体重が重いほうが大きなエネルギー(位置エネルギー)を持っていて有利なのは事実です.その代わり,体重の重い選手は加速するのが遅く,トップスピードになるのに時間がかかります(慣性力が大きい).体重の軽い選手は,スタート地点でもっているエネルギーは小さいですが,その代わり体重の思い選手にくらべ,すばやく加速することができるんです.両者にメリット,デメリットがあるということです.鈴木学長は他の身長(バレーボール等)や体重(相撲等)が影響する種目に比べ,アルペンスキーは非常に平等なスポーツだとおっしゃっていたのが印象的でした.
この物理的特性を理解すれば,自分のフィジカルに合った技術と戦略を構築することも可能だと思います.体重が軽い選手は最悪,ミスして減速してもすぐにスピードが回復するので,ミスを恐れずまっすぐ攻めることも有効な戦略になります.また,多少の減速を伴うスゥイングを多用する技術が適していると思います.体重が重い選手は,ひとたび減速するとスピードを回復するのに時間がかかってしまいます.そのかわりスタート地点で大きなエネルギーを持っていますので,このエネルギーメリットを生かすために,多少ラインが遠回りになってもスピードを維持して滑らかに滑られるライン取りをカービング主体で攻める戦略と技術が有効だと思います.
ただし,このような技術と戦略は,ある程度アルペンスキーを続けている多くの選手が自然に身に付けていると思います.人間の直感てすごいなと思います.
2018/11/01