攻める

アルペンスキーでは積極的な滑り,いわゆる「攻める」滑りが重要と言われています.しかし,そもそも「攻める」滑りとは,具体的にどういうことなのでしょうか?

攻める滑りとは,単純には直線的なライン取りの滑りのことだと思います.直線的なラインは滑走距離を短くし,タイムを縮めるのに非常に効果的です.ただし当然,失敗のリスクが上がります.そのため,直線的なライン取りをするには勇気が必要だと思います.勇気をもって積極的に滑るために,スタート前に気合を入れて,自分を鼓舞する方法が一般的だと思います.そのため直線的なライン取りと勇気はセットになっていると思います.その二つをセットにして「攻める」という言葉で言い表されていると思います.

攻める滑りができなかった選手にメンタルの弱さをしかるコーチをよく見かけます.この時,重要なのは,その選手が本当にメンタルの弱さで直線的なラインを滑られなかったのか,それとも技術が未熟でそもそも直線的なライン取りを滑ることができなかったのか,見分けることだと思います.

何らかのメンタルが要因であれば,その指摘自体は正しいです.ただし,好き好んで遅く滑る選手などいません.どのような性格特性が,そのようなメンタル状態を引き起こしてしまったのか,分析しメンタルの対策を考えるべきだと思います.しかって駄目とはいいませんが,しっかりとした分析と対策のほうがはるかに効果的だと思います.

技術が未熟なせいで直線的なラインで滑られなかったとしたら,メンタルの弱さをしかるのは完全に間違ったリアクションです.直線的なラインを滑るということは,自分が滑ることのできるラインがいくつもあり,その中から直線的なラインを選択するということだと思います.これは,バーン,セットに対して自分の技量が上回っている状態だと思います.しかし,自分の技術を超えたバーン,セットでは完走だけで精一杯で,直線的なラインは選択肢にすら入っていないと思います.そこを無理矢理,直線的に滑っても,アウトしてしまうだけだと思います.攻める滑りは,メンタルも必要ですが,そもそも高いスキー技術がないとできないと思います.

2020/07/01