ターン中に作る身体の軸は長ければ長いほど,より大きな遠心力に対応することができると思います.軸を長く作ると引っ張られる遠心力に対して垂直に姿勢がとれ,普通に立っている姿勢に近づくためです.ただし,軸は長いほど重心が遠心力の中心側に移動し,内倒のリスクがあがると思います.軸を作る姿勢は,大まかに3種類あると思います.

1つめは,全身を一直線状にして軸を作る方法です.最も長い軸が作られ,最も大きな遠心力に長時間耐えられる姿勢だと思います.ただし,身体全体を傾けることになるので,内倒のリスクが高まります.また,ターンのたびに身体全体を傾けて,もう一度起こすという時間的ロスが生ずると思います.

2つめは,腰から下の脚のみで一本の軸を作り,腰から上の上体は垂直に立てて,いわゆるくの字姿勢を取る方法です.現在のWCの主流の技術だと思います.腰から下の脚による軸は,全身を一直線にした軸よりは短いため最大対応遠心力は劣りますが,重たい頭がスキーに近づくので,内倒のリスクが減ると思います.また,上体は垂直にキープしたまま脚だけで,すばやく角付けすることが出来ると思います.

3つめは膝から下だけの軸を使う方法です.この方法では内倒リスクを更に下げることができますが,対応できる遠心力が非常に小さいと思います.また,自分から荷重を働きかけないと板がたわんでくれないので,脚力を非常に使うと思います.

現在,日本では膝から下だけを使う技術が主流となっていると思います.日本国内の短くて斜度が緩く雪の柔らかい条件であれば,この方法でも速く滑ることも可能だと思います.ただし,非常に高度なフィジカルと天才的なスキー操作が必要だと思います.また,ヨーロッパの長く氷結した急斜面ではまるで通用していないと感じます.技術が環境に全く合っていないと思います.

2020/05/06