私は,いわゆる「腰高」がターン技術の基本と考えています.
腰高とはターン荷重中に脚の曲げ伸ばしを行わず,腰の位置を高くキープし,筋力ではなく骨格でターン遠心力に対応するターン方法です.そのため,大きな外力に長い時間,耐えることができます.動作も少ないため,高速下でも忙しくならず,ターン動作を再現しやすいと思います.またターン前半からスキー板に積極的に荷重することもできます.非常に合理的で,WC等の難易度の高いコースで力を発揮する滑り方だと思います.
現在の日本のターン技術は,脚を出来るだけ大きく曲げ伸ばすことで,スキー板に大きな荷重を伝達するようにする技術が主流かと思います.このターン方法も絶対に駄目というわけではありません.膝を柔らかく使えるので,タイトなラインを攻めやすく,日本の柔らかい雪や,荒れたバーンに対応しやすいメリットがあります.しかし,1ターン毎に大きな脚力を消耗する上,腰高よりも最大対応遠心力が小さいです.また,動作が多いため,スピードが上がってくると動作の再現性が低下するデメリットもあります.パワーとセンスを兼ね備えたごく一部の天才スキーヤーだけが,このターン方法でも速く滑ることが可能だと思います.コースが短く緩斜面が多く,アイスバーンの少ない日本レース環境に向いたターン技術だと思います.しかし長く凍結した急斜面が多いWCのようなコースには不向きだと思います.さらに膝の屈曲により靭帯にテンションがかかるため,ケガのリスクが高まるデメリットもあります.
腰高だと重心が高くて不安定に感じるかもしれませんが,前後方向は長いスキー板を足に付けているし,左右方向は適度なスタンスをとれば,実はバランスをとることはさほど難しく無いと思います.また腰高にすると膝が伸びて脚が軸のようになるので,股関節,骨盤の運動がかなり重要になります.いかに骨盤を柔軟に正確に動かすかが腰高の滑りには極めて重要です.腰高と骨盤を動かす滑りはセットです.
腰高のデメリットは,膝が突っ立っているので,凸凹や荒れに飛ばされやすく,雪面感覚も鈍くなる点です.定期的な基礎練習が必要で,低速プルークやシュテムターンをできるだけ滑らかに滑る練習や,ターン姿勢の確認を定期的に行う必要があると思います.また,簡単で短いコースでは腰高の滑りはメリットを発揮しづらいです.不向きな環境での成績が悪いことは割り切り,安定した成績にならずとも,腰高の滑りが生かされる条件のときに好成績を狙う,自分の技術を信じる信念が必要だと思います.
2020/04/07