よく,あの選手はスキーセンスがあるとか,この選手のスキーセンスはいまいちとか耳にしますが,いったいスキーセンスって具体的に何のことを言っているのでしょうか?私は,たくさんのスキー操作の引き出しをもっていて,それを瞬時に適切に条件に合わせて選定して使える能力のことをスキーセンスと言っているのではないかと考えています.
アルペンスキーでは,出くわした条件に瞬時に対応しなければならないことが多いと思います.試合では,無線である程度のインフォメーションが上がってきますが,実際にコースに入ってみて,現場で対応しなければならないことが非常に多いと思います.たくさんのスキー操作の引き出しをもっていて,それを瞬時に的確に条件に合わせて適用できる能力,「スキーセンス」を備えた選手はアルペンスキー選手として大きなメリット,武器をもっていると思います.
では,いわゆるあまりスキーセンスがない選手は,速く滑ることはできないのでしょうか?私は,そんなことは全く無いと考えます.スキーセンスがさほど高くないと,滑りはスキーセンスの逆になります.つまり,スキー操作の種類が少なく,どんな条件でも一定のターン技術で滑るということになると思います.一見,速く滑るには不利に感じます.しかし,もし一つのターン方法しかできないとしても,その一つのターン方法を磨き上げ,ほとんどの条件で速くすべることができるようにしたとすれば,スキーセンスの高低と関係なく,幅広い条件で速く滑ることが可能になると思います.スキーセンスを駆使して瞬時に条件に応じた技術を繰り出す必要がそもそもなくなるということです.実際,このような手法で滑っているWCレーサーは案外,多いと思います.また,自分のベストターンをひたすら繰り出す滑りは,無駄な動作が少なく,タイムが出やすい傾向があると思います.
速く滑る方法は本当にたくさんあると思います.スキーセンスはその中の一つに過ぎないと私は考えます.
2019/12/26