将来性

親御さんにとって,お子さんにスキー選手としての将来性があるかどうかは,かなり気になることだと思います.私は将来性がないジュニア選手は一人もいないと考えています.しかし一方で,将来性が約束されているジュニア選手も一人もいないと考えています.

私は個人的に,将来性を「もしアルペンレーサーを生業にした時に,引退後に当面の生活に困らないだけのお金と社会的地位を得られる選手になれること」と定義しています.具体的にはWCのどれか一種目以上で,第二シード以上に複数年間,定着することです.皆川や佐々木は,この定義を達成したと考えています.

私は,普通に考え得るアルペンスキーの基本的な技術を全て絶対的に習得することができれば,身体能力や才能に関係なく,ワールドカップ第二シードまでなら誰でも行けると考えています.特別に高度なターン技術や身体能力は必要はないと考えています.それゆえ,アルペンスキーにとりくむ全てのジュニア選手に将来性があると考えています.

ただし,普通に考え得るアルペンスキーの基本的な技術を全て絶対的に習得することは,誰にでもできる反面,とても難しいことでもあると思います.実際,日本代表クラスでさえ,後傾,内倒,後踏み,ラインがまっ直ぐすぎるなど,いたって基本的なことが治せていない選手がいると思います.

決して簡単なことではありませんが,黙っていても,どんな子でもWCシードレーサーになれる将来性があります.したがってコーチがジュニアを指導する際に最も注意すべきことは,子供の将来性にわざわざ上限を作って蓋をしてしまうことだと思います.もちろんジュニア選手が全員,プロスキー選手になってWC優勝を目指すわけではありません.しかし,いざそういう夢を持った子がいた時に,その夢を実現させることが可能な伸びしろのある技術を授けておいて,あとは本人が夢をかなえようと努力すれば実現可能な状態にしておくことが重要だと思います.

なかなか上達しない子を親身に指導して,早く上達させてあげて大会で良い成績をとれるようにして,喜ばせてあげたい気持ちはわかります.しかし上達を急ぐと将来性に蓋をしてしまう可能性は高いと思います.ジュニアコーチにもっと重要なことは,子供を早く上達させる技術ではなく,なかなか上達しない子がくじけてしまわぬよう暖かく見守ってあげる愛情に尽きると思います.どんなジュニア選手でも自然に必ず上達します.子供を信じる事が重要だと思います.

改訂2021/02/20
2020/09/26
2020/09/08